最新ツールの進化を見ていると、AI映像の技術差は想像以上のスピードで縮まっています。その先で制作者はどこに立つべきかを考えます。
きっかけは、ByteDance社が発表したAI動画生成ツール「Seedance 2.0」の登場です。従来のSora 2と同等かそれ以上のクオリティで10〜15秒程度の映像を生成でき、しかも制御性が高く、意図した通りに映像を動かせるため、作品として仕上げやすくなりました。実際にSNS上で公開されている作品を見ると、AI映像を始めて間もない方でも、かなり質の高いアウトプットを出せる状況になっています。
さらに注目すべきはAIエージェントとの組み合わせです。従来は15秒ずつシーンを構想し、一つずつ映像を生成してつなぎ合わせる工程が必要でした。しかしAIエージェントを使えば、この工程の相当部分を半自動化できます。1分程度の映像であれば、ハイクオリティなものが量産できる時代が年内にも到来すると私は見ています。つまり「AIツールを使いこなせること」自体の希少性は、急速に失われていくのです。
誰もが高品質なAI映像を作れるようになったとき、制作に携わる人間にはどんな道が残るのでしょうか。私は大きく3つの選択肢があると考えています。1つ目は撤退し、別の領域へ進む道。2つ目は、AIが出力できない確率の低いアウトプットを生み出すアーティスト、いわば天才の道。そして3つ目が、知見を体系化して人に届けるコミュニティの道です。
ここで押さえておきたいのは、AIの仕組み上、出力されるのは「一般的にハイクオリティとされるもの」だという点です。一方で優れたアーティストは、発想自体が唯一無二の作品を生み出します。この差は原理的に埋まりません。ただし、その領域に到達できるのは業界全体でもごく一握りでしょう。多くの制作者にとって現実的な問いは、技術以外のどこに自分の価値を置くか、なのです。
私自身が選ぶのは、3つ目の道です。ツールがどれだけ進化しても、ゼロから始める方にとって「どう作ればいいか」は依然として分かりません。ゼロの状態からハイクオリティな作品を作れるようになるまでの道筋を、分かりやすく伝える。そこにこそ持続的な価値があると考えています。振り返れば、解説コンテンツの発信やクリエイターとの対談企画など、以前から自然とこの方向に取り組んでいました。改めて考えるまでもなく、すでに動き出していたこと自体が、進むべき道の証拠だと感じています。
この考え方は、当社が法人向けに提供しているAI映像研修の設計思想にも通じています。技術が均一化するからこそ、ノウハウを組織に定着させ、自社で回せる体制を作ることが競争力になります。皆さんの業界で技術が均一化したとき、どこにバリューを発揮するか。この問いは、映像業界に限らずあらゆる企業に共通する経営課題だと私は考えています。